こがねいこくごセミナー「どうする?演劇的手法」レポート!

 12月23日、本学アクティブラーニング棟にて行われたセミナーのレポートです。今回は本校が工事で使えないため、大学のアクティブラーニング棟を会場に行いました。…迷われた方、申し訳なかったです。。

教員向けインプロ研修:講師 足立区立桜花小学校 神永裕昭先生

午前中はインプロで博士論文を書かれた神永先生によるインプロ研修です。

「ツードッツ」という2人で言葉を介さずに顔を描く活動を柱に展開されました。言葉がなくても、互いの意図を探り合いながらきちんと絵になっていきます。「線を書くコミュニケーションはあったけど、それとは別のコミュニケーションもあった」と言う参加者の方からの発言が印象に残っています。人間って、言葉がなくてもやり取りできるんだと言うことがよくわかりました。


その後、書いた似顔絵どうしをマッチングします。これも面白かったです。今、描いた顔が、まるで2人の子供みたいになって「この子にお似合いなのは・・・」と運命の相手(!?)を探していました。
さらにそこでカップリングされた2人でお話し作りをするという流れ。そのまま授業にできそうです。ただの線の組み合わせだった似顔絵が、いつの間にか物語の主人公になっていく・・・この軽やかな跳躍にインプロの魅力があるように思いました。神永先生、さすがの構成です!






提案授業:成蹊小学校 林久博先生

午後は、本校3年1組の子供達に集まってもらって、提案授業をしてもらいました。

今回は、ドラマの技法をミニマムに学ぶことが提案でした。実際に鉛筆劇と、インタビュー(ホットシーティング)という2つの具体的な技法を取り入れた授業を行っていただきました。

林先生は飛び込みの授業で、子供達と出会ったのは授業開始15分ほど前でしょうか。このわずかな時間で林先生が子供達との関係を作っていくところから大変興味深く見させていただきました。後の協議で話されていましたが、「表現教育はアクセルを踏んで、後でブレーキのかけ方を覚えさせるようにしている」そうです。ついついブレーキのかけ方から入ってしまいそうですが、表現するということは、子供達がアクセルを踏み込めるようにすることも大切なのだと学びました。そして何より、林先生自身が表現することにアクセル全開だったことが印象的でした。まさに名人芸です!



授業後の協議では、夏のセミナーで講師を務めていただいた黒木歩さんに、急遽グラレコをお願いしました。だってそこに書き放題の壁があったから・・・アクティブラーニング棟ならでは展開でした。黒木さんにも(多分)楽しんでもらえてよかったです。それにしても目の前で話している内容がグラレコされていくというのは貴重な体験です。こういう記録は生成AIにも当分できないはず!



講演:本学准教授 渡辺貴裕先生


朝会ったときは「何話そうかな」とぼやいていた渡辺先生でしたが、いざ始まれば今日一日のセミナーから実にたくさんの学びを切り出して講演してくださいました。
ご自身の著書でも書かれていましたが、従来の国語は「理解→表現」という方向が強かったという指摘。改めて考えさせられました。例えば神永先生のインプロ研修でやった「ツードット」で、言葉を交わさずに顔を書く活動も、教室でやろうとすると、つい「どんな顔にするか相談してから始めて」などと言ってしまいそうです。渡辺先生は「表現と理解の相互循環」とおっしゃっていましたが、表現には必ず理解が先立たなくてもよいということは肝に銘じておきたいです。
そして「周りの状況とのなかで「なる」が成立する」という言葉も響くものがありました。講演の後半で、渡辺先生が長縄を回すフリをして、それをみんなで跳ぶフリをする(跳んでいた?)場面があったのですが、まさに渡辺先生のフリが状況を設定していたといえる場面でした。そしてそれを見た参観者の方は、そこに長縄はないけれども、まるであるかのように想像して跳んでいたのです。
この日のセミナーを通して、こうした場面を多く見た気がします。なんと言えばいいでしょうか…人間は、立ったその場を柔軟に受け入れ、かつその場に柔軟に関わる力をもっている…渡辺先生の著書「なってみる学び 演劇的手法で変わる授業と学校」(時事通信社)の以下の言葉を思い出します。

人には本来、身体と空間、想像力を活用して学ぶ力があります。それらを使わずに学ぶのは、いわば、水の中を、手のかきだけを使って泳ごうとするようなもの。脚や全身の動きを使うことで広がる泳ぎの可能性を、みすみす逃してしまっています。(p.13)

…改めてセミナーを振り返り、この言葉を振り返り、自分の実践を振り返り…手だけでがむしゃらに泳ごうとしていたかもしれないなと思います。もっと別の泳ぎ方があるのかもしれない…試してみようかな、と思えたセミナーでした。

講師の先生方、また参加してくださった皆様、ありがとうございました。
来年度以降、第2回「どうする?演劇的手法」の開催もありかなと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。


小野田雄介
yonoda11@u-gakugei.ac.jp








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