第13回KOGANEI授業セミナー レポート

先日のKOGANEI授業セミナーには多くの皆様にご参加いただき、無事に盛会に終えることができました。振り返りの記事をあげたいと思います。 

授業Ⅰ 「物語の不思議さを考え、伝え合おう」廣瀬修也 
    教材名:「みきのたからもの」 

授業Ⅰは、新教材の「みきのたらかもの」を用いた授業でした。私も本実践で初めて読みましたが、かなり不思議なお話です。この教材性を生かし、問いを考えるという切り口で実践化した授業であったと思います。

本時では、前時の問い「ナニヌネノンはどんな顔?」について振り返るところから始まりました。ナニヌネノンが挿絵で一度も登場しないことに触発された問いと考えられますが、子供からは「みんな宇宙人っぽい」という発話がされました。後の協議会では、この点について言及される場面もあって、私も考えさせられました。確かにこの問いについて、本文中に明確な根拠はありませんが、それでも子供達が描いたナニヌネノンには、子供達の想像するナニヌネノンが描かれていたと思います。それは子供達が物語から受け取ったナニヌネノン像であったと考えられます。もちろん読み違いもあると思いますが、お互いのナニヌネノンからどんな感じを受けるか話し合う活動を通して、ナニヌネノンの人物像について話し合う展開も考えられたように感じました。そしてその時、本文と結びつけて、自分のナニヌネノン像を語り出すようにも思います。 

本時の中心の問いは「どうして石から風の音が聞こえるか」でした。これも本文中に明確な根拠はありませんが、ある子は「海の音にも似ているって書いてあるから、海の水がかかったのかな」と発話していました。このようにわずかであっても本文から手がかりをつかもうとする姿が素敵だなと感じます。この描写から想像を広げる展開も十分考えられたように思いました。 

廣瀬の提案の柱は「問い」でした。低学年であっても、いや低学年だからこそ(?)授業中において「問い」が生成される場面もたくさん見られた授業でした。この生み出された問いをどのように扱えば良いか、国語科部としても検討したいと思います。 

 

授業Ⅱ 「体験!発見!物語の面白さ」橋浦龍彦 
    教材名:モチモチの木 

授業Ⅱでは、登場人物に共感して読むことを目指した授業が行われました。この提案は、橋浦が子供の実態として「他者意識が乏しい」ことや「自分の見方にとどまっている」ことが見られる点に根拠があります。この課題は橋浦学級に限らず、本校に見られる傾向として受け止める必要があるかと思います。 

このテーマの実現に向けて、本実践では、「なる」読みと「見る」読みの実践が行われました。「なる」読みでは、子供が自分で演じたい場をつくって、演じながら学習課題の解決に向かいます。「見る」読みでは、教科書や友達の考えをヒントに読みをもちます。 

 子供達が学び方を選択する授業の一つの形だったのかなと思い、自分も考えていかなくてはいけないなと感じる一方で、難しさも感じました。それは例えば、学習課題と学び方の選択の適切性の問題です。 

本時の学習課題は「豆太は変わったのか」でしたが、この課題について「モチモチの木」になって考える子たちがいました。豆太について考えるのに、モチモチの木から考えるでいいのか、ということもありますし、この子達は前時の授業でもモチモチの木から考える方法を選択している、という点も少し気になりました。課題が変わっても学び方を変えない、あるいは変えたくないのは、3年生の実態とも考えられますが、モチモチの木になって考えることが前提になっていたとすると、学習課題に対して方法を選択したということにはならないのではないかと思います。 

ただ、これも授業実践があったから考えられたことです。橋浦の提案の柱は「共感」でしたが、私は多様な学び方を読むことの授業に持ち込んだ実践とも捉えています。「なる」と「見る」をどのように往還していくのか、こちらも国語科部として考えていきたいと思います。 

 

指導・講評 
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官 
大塚健太郎先生 

本校OBでもある大塚先生からは、学習指導要領の観点から、「問い」と「共感」についてお話いただきました。 

学習指導要領の3つの柱を念頭に、「問い」をもつことはどの柱に位置づけられるのか、「共感」はどの柱に位置づけられるのか、という視点は、今回の提案の価値づけにもなるお話だっと思います。 

またこれから人口減少が予想される社会において、これまでの授業と同じで良いのか、という問いはしっかり受け止めねばらないものだと感じました。これまでは、ともすれば早く正解に辿り着くことが求められた教育観から、子供達、また教師が関わり合って指導事項を育成していく教育観へとアップデートしていく必要があることも、示唆に富んだものでした。 


文責:小野田

yonoda11@u-gakugei.ac.jp

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